定番の冬アウター、スタジャン。
最近は人気が再熱してきたので、日々のコーディネートに取り入れている方も多いのではないでしょうか。
しかし、スタジャンの唯一のデメリットとしては、そのお手入れの難しさですよね。
スタジャンには高価なものが多いので、しっかりとメンテナンスして長く着たいもの。
こちらでは、そんなスタジャンのお手入れについてご紹介しますよ。
スタジャンとは
まずは基礎知識を。
スタジャンはスタジアムジャンパーを略したもの。
とはいえ、これは完全なる和製英語みたいですね。
海外では、レターマンジャケットやアワードジャケットと呼ばれるそうです。
元々は、野球選手の防寒着として誕生しました。
そのため、チーム名が刺繍されていたり、マークなどがパッチされていることが多いですね。
袖が革、身頃がメルトンウールという特徴的な仕様も、選手が体を冷やさないように配慮されたものなのでしょう。
この辺りは現代のスタジャンにも色濃く引き継がれていますね。
スタジャンの素材
さて、それでは本題のお手入れについてご紹介していきます。
先ほども少し触れましたが、問題はスタジャンの特徴であるこの2点。
- 身頃がメルトンウール
- 袖が本革
これにつきます。
なぜこの2つの素材が厄介なのか。
ここはスタジャンをお手入れするためには非常に大切な部分です。
ウール(メルトン)
スタジャンは身頃から背中にかけてメルトンウールが使われています。
よく知られるウール素材ですが、普通のウールと違うのは密度を高める工夫がされていてフェルトのような質感になっているのが特徴。
重厚感があり保温性にも優れています。
”野球選手の身体を冷やさないようにする”という目的からすればピッタリの素材かもしれません。
しかし、ウールは安易に水洗いできないため普通に洗濯することはできません。
基本的にはドライクリーニングがもっとも風合いを損なわない方法です。
何の配慮もせずに水洗いすると、固くゴワゴワした風合いになり本来の質感を損なってしまうことでしょう。
革(レザー)
袖が本革になっているのもスタジャンの特徴です。
風を通さないので保温性が高く強度も強いメリットがあります。
(”野球選手の肘や肩を冷やさない”という意味でそのような仕様になったんでしょうか?)
言うまでもなく、革の洗濯は非常に難しい部類に入ります。
ドライクリーニングでは革の油分が除去されて硬化する可能性がありますし、水洗いでは収縮の恐れがあります。
どちらの方法でも特殊な処置が必要になり、高度な洗い方をしなければなりません。
合皮
安価なスタジャンなら本革ではなく合皮が使われているかもしれませんね。
大雑把に言うとビニールのような素材になるので、本革に比べると水洗いしやすいといえます。
取り扱いしやすい反面、いくら着込んでも本革のような味は出ず、寿命が来るとヒビ割れたり表面が剥離するなど生地自体が劣化してしまいます。
異素材の組み合わせはお手入れが難しい
このようにメルトンウールと革はそれぞれ単体でもお手入れが難しい上に、それらが組み合わさって一つのお洋服になっているスタジャンは非常に難易度が高いと言えます。
こちらのスタジャンはご覧のとおり、洗濯表示は水洗いもドライクリーニングも×になっています。
さらに具体的に言うと・・・
- ドライクリーニングするとメルトンル部分は風合いよく洗い上がるが、革部分が硬化するかもしれない
- 水洗いすると汚れや臭いが落ちやすいが、メルトンがごわつくかもしれない
このように”あちらを立てればこちらが立たず”状態になってしまうのです。
そのためクリーニング店では一つの方法に限定せず、スタジャンの状態を見ながら適した方法にカスタマイズしていくのです。
スタジャンのクリーニング
それではクリーニング店ではスタジャンをどのように取り扱っているのでしょうか?
皆さんもスタジャンをクリーニングに出したことはあるかもしれませんが、実際にどのように洗ったのかまでは知らない方の方が多いと思います。
そんな裏側を少しだけご紹介します。
(もちろんクリーニング店それぞれのこだわりがあるので、こちらでご紹介した方法が絶対というわけではありません。)
ドライクリーニング
スタジャンの状態が比較的良好な場合にはドライクリーニングすることが多いです。
とはいっても、普通にドライクリーニングすると革の必要な油分まで除去され硬化する恐れがあります。
そのため、加脂剤など普通のドライクリーニングでは使用されない添加剤を使ってクリーニングされます。
汚れ落としと栄養補給を同時に行うイメージです。
このような手法はドライクリーニング機そのものが革製品専用にカスタマイズされている場合が多いので、一般のクリーニング店ではほとんど見かけず、革クリーニング専門の特殊業者が設備しています。
水洗い
臭いやカビの発生、目立つ汚れが多い場合には水洗いが適しています。
基本的には手作業での洗浄となり、専用の洗剤を使用しながらブラッシングして汚れを落とします。
このように丁寧に水洗い(手洗い)することで、洗浄後には嫌な臭い除去できます。
その後栄養補給することで革特有のハリを復活させます。
料金
クリーニング料金の相場としては、1着5000円~7000円ほどです。
素材が革(レザー)になると、一般的なお洋服よりも手間が掛かり専門的な処置が必要になるので、価格も割高になります。
作業内容としては、クリーニング+保湿、栄養補給がメイン。
染め直し
革部分はクリーニングで落としきれなかった場合でも、染め直し(色補正)で汚れを目立たなくさせることが可能です。
ここまででしたら基本料金内で対応してくれるクリーニング店もあります。
事前に確認しておきましょう。
カビや臭い
あまりにもスタジャンの状態が悪い場合には、追加料金になる場合もあります。
特にカビはひどい状態になるとクリーニングしても落とすことができないので、最悪受け取ってもらえない可能性も・・・。
そうなる前に日々のお手入れや定期的なクリーニングを行っておきたいものです。
自宅でできるケアや洗濯
このようにプロでも難易度が高くクリーニング料金が高額になるスタジャンは、日々のお手入れがとっても大切です。
そのちょっとしたひと手間でクリーニングの頻度も減らすことができますし、着続けることにより良い味を出すことができるでしょう。
洗濯機は使える?
ここまでお読みになったのに「洗濯機に入れて普通の洗濯物と一緒に洗おう!」なんて方はいないと思いますが・・・(苦笑)
おさらいしておくと、安易に水洗いするとこのような危険性があります。
- メルトン部分の風合いが変化してごわつく
- 革部分が伸びる(もしくは縮む)
建前ではなくお話しすると、正直革部分は大丈夫かもしれません。
干し方に注意したり、その後のオイルアップで栄養を与えてあげる方が大切です。
しかし、メルトン部分の風合いは間違いなく変化します。
そのため洗濯機で洗濯するのは避けた方がよいでしょう。
日々のお手入れ
さて、ココが一番重要な部分かもしれません!
日々のお手入れ方法を見てみましょう。
ブラッシング
メルトン部分はブラッシングがメインになります。
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このような馬毛ブラシなど、柔らかくもコシがあるブラシがよいでしょう。
着用中に付着したホコリを払い落とすとともに、繊維の毛並みが整うことで光沢が出て風合いがよくなります。
着用後には必ずブラッシングすることを習慣づけるといいかもしれませんね。
オイルアップ
袖革部分は定期的にオイルアップして栄養補給してあげましょう。
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これは革のお手入れでは非常に重要です。
何も手入れしないまま放置していると、カビが生えたりひび割れて硬化したりしますからね。
多少の汚れならオイルアップだけでも目立たなくなります。
3カ月に1回などペースを決めてオイルアップしてあげましょう。
スタジャンの洗濯方法
それでも自分で洗ってみたいよ!って方はこちらを参考にしてください。
でもスタジャンの家庭洗濯を推奨しているわけではありませんよ。
日々のお手入れをしっかりやって、数年に1回クリーニングに出す。
このようなサイクルがベストだと思います。
手順1:洗浄液を作る
まずはデリケート衣類用中性洗剤を使って洗浄液を作ります。
デリケート衣類用中性洗剤はこのような洗剤です。
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このような洗剤は、ウールのカーディガンなどを手洗いする洗剤です。
一般的な粉末洗剤は弱アルカリ性で、ウールのタンパク質や革の油分を除去してしまう可能性があります。
風合いよく洗い上げるならこのような中性洗剤を使いましょう。
スタジャンを投入する前によくかき混ぜて洗浄液を作っておきます。
手順2:押し洗いする
軽くたたんだ状態で洗浄液に入れていきます。
両手で押し入れる→浮き上がってくる→また押し入れる
といった具合に押し洗いしましょう。
ウール部分は擦ったり揉んだりすると風合いが変わるので、なるべく負荷を掛けないように洗い上げます。
革部分は軽くブラッシングするのもいいですね。
手順3:濯ぎ→脱水
水を入れ替えながらよく濯ぎます。
この時も揉まないように押し洗いの要領で行いましょう。
泡が無くなったら脱水です。
最後の脱水は洗濯機の脱水機能を使います。
革部分が相当重くなっているはずなので、バランスに気をつけて形を整えてから脱水しましょう。
手運4:乾燥する
型崩れさせないためには干し方もポイントです。
脱水したとはいえ革部分がかなり重くなっているはずなので、最初に平干しして少し乾燥させてからハンガーに掛けましょう。
(画像では拡げたバスタオルの上に平干ししています。)
ハンガーの選び方にも注意。
幅広の頑丈なハンガーを使って型崩れが起きないように工夫してください。
(画像ではプラスチックハンガーを何本も重ねて肩幅にあわせています。)
もちろん乾燥機はNG。
メルトン部分の風合いが変わったり、革部分が硬化する恐れがあります。
手順5:オイルアップする
乾いたら革部分にオイルを塗って栄養補給してあげましょう。
メルトン部分はブラッシングして毛並みを整えます。
これでスタジャンの洗濯は完了です!
いかがでしたか?
この他にも革部分から色落ちしたり様々なトラブルが考えられます。
チャレンジするときは自己責任でよく注意しながら洗濯してくださいね。
まとめ
それではポイントをまとめていきましょう。
まずスタジャンのお手入れが難しいのはボディがメルトンウール、袖が革という異素材の組み合わせになっているからです。
- メルトン部分はブラッシング
- 革部分はオイルアップ
このようなお手入れを基本としながら、数年ごとに定期的にクリーニングするのがおススメ。
ご紹介しておきながらアレですが、ご自身で洗濯するのはまったくをもっておススメできません。(苦笑)
メンテナンスはプロのクリーニング店に任せましょう。
ひどく汚れてからではクリーニング代も割高になる可能性があるので、日々のお手入れをしっかりやっておきましょうね。