春の衣替え時期に洗いたいアイテムといえば冬に大活躍したダウン衣類。
「クリーニング代も高いし自分で洗ってみようか・・・。」という方も多いのではないでしょうか?
でもちょっと待ってください!
ダウン衣類は安易に洗うと失敗しますよ!
チャレンジする前にこちらの記事で正しい洗濯方法と、失敗しないポイントをチェックしてください!
洗う前に洗濯表示をチェック
お洗濯の前には必ず洗濯表示をチェックしてください。
このマークがついていたら水洗いできません。
家庭洗濯では水洗いすることになるのでこのマークがないか確認します。
それでは実際にダウン衣類についている洗濯表示を見てみましょう。
あら?水洗い不可のマークがついてしまっています。
実はほとんどのダウン衣類はこのような洗濯表示になっています。
クリーニング店で何着ものダウン衣類を検品してきましたが、本当に水洗い不可のものが多いです。
※有名どころですとユニクロやGAPなどは水洗いOKになっていることが多いです。
ダウンは洗えないってこと?
そういう訳ではございません。
水洗い不可と書かれている以上、自己責任にて洗うことになりますが水洗いはできます。
それどころか本来は水洗いが適しています。
過剰なドライクリーニングは羽毛の油分を奪ってしまい羽毛本来の膨らみを失ってしまいます。
ダウンを洗うのには正しい水洗いが最適なのです。
シェルの素材を確認
しかし、上記の内容はあくまで”羽毛”にとってのこと。
その”衣類”が洗えるか?となると別の問題も発生します。
洗えるのは生地がナイロンかポリエステルである場合に限ります。
ウール素材のダウンはドライクリーニングしなければなりません。
また、装飾や部品、プリント、特殊なロゴマークなどがついている場合も避けたほうがよいでしょう。
実際に洗えるかは知識と経験により判断します。
少しでも不安が残る場合にはクリーニング店へ相談してください。
洗濯と乾燥
もちろん普通の衣類のようには洗えません。
基本的には手洗いになります。
それでは詳しく見てみましょう。
手順1:中性洗剤を使って洗浄液をつくる
洗剤はデリケート衣類用の中性洗剤をおススメします。
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一般的な弱アルカリ性の洗剤でも洗うことはできますが、洗浄力が強く羽毛にダメージを与えかねません。
弱アルカリ性粉末洗剤は皮脂汚れを落としやすいので普段の洗濯には最適です。
しかし、その油分除去力がダウン(羽毛)の油分を取り除いてしまう恐れがあるのです。
そのため中性のデリケート衣類用洗剤を使います。
ダウン衣類が浸かる程度のぬるま湯に洗剤を入れてよく混ぜ合わせ、洗剤がしっかりと溶け込んでからダウンを投入してください。
ワンポイント:襟や袖口は前処理しておこう
ダウンは普通の洗濯物のように、ガシャガシャと力強くあらうことはできません。
そのため、襟周りや袖口など汚れが目立つ部分は下洗いしておくと効率的です。
洗濯前に汚れ部分をぬるま湯で濡らし、洗剤の原液をつけてブラッシングしておきましょう。
ブラシがなければ揉み洗いしてもOKです。
手順2:ダウンを洗う
軽くたたんだ状態で洗濯液へ入れていきます。
ここからダウンを洗っていくのですが、お察しのとおりダウンはプカプカと浮いてきます。
このまま機械任せで洗っても当然キレイになりません。
このように浮いてくるダウンを手で押し洗いしていきます。
丁寧に5分ほど洗いましょう
洗ったあとの水はこのように汚れが溶け出しています。
目に見えて確認できると”洗っている!”という実感が沸いてきますね!
すすぎの前に30秒ほど中間脱水します。
その際にダウンが偏っていたりするとうまく脱水できませんのでご注意ください。
※バランスが悪くおかしな回転になると洗濯機を傷める可能性があります。異変を感じたらすぐに作業を中断しましょう。
汚れた水を一度排水し、キレイな水をつかってすすいでいきましょう。
なるべく多くの水を使いながら、洗剤残りが無いようしっかりとすすぎます。
最後に適量の柔軟剤を入れて仕上げましょう。
1分ほど脱水してお洗濯完了です。
こんな感じに洗いあがりました。
本来の姿を見る影もなくペッタンコですが・・・。
実は、本当の戦いはここからなのです!
ワンポイント:浮き上がってくるのが難点
繰り返しになりますが、洗濯機ではダウンがプカプカと浮き上がってきてしまいます。
ドラム式では上から下に落ちる叩き洗いという方法なので、それなりに機械力が加わりますが、渦巻き式ではなかなか汚れを落とすことはできません。
かといって手洗いですと、それほど洗浄力が高くないのも事実。
目立つ汚れは下洗いで落としておくのがポイントです。
手順3:効率よく乾燥させる干し方
さて、問題はここからです。
実はダウン洗濯の失敗事例で多いのは乾燥工程に原因があります。
洗いの時にトラブルになることは少ないんです。
ここからダウン本来の膨らみを取り戻さなければなりません。
それでは正しい乾燥工程をチェックしていきましょう!
洗濯後のダウンは中の羽毛が絡み合ってダマのようになっています。
羽毛がほぐれて絡みが解消されなければボリュームは復元しません。
ハンガーにかけた状態でパンパンと手で叩きながら羽毛をほぐしてあげましょう。
途中で何度か手で叩きながら自然乾燥した状態がこちらです。
洗い上がり直後の状態から比べるとボリュームが戻ってきました。
フード部分も忘れずに、万遍なく叩いてあげるのがコツです。
ワンポイント:干すときの一手間は、いつもの洗濯でも効果的
クリーニング店では”手アイロン”なんて言ったりします。
今回は手でパンパンと叩いて羽毛をほぐしました。
いつもの洗濯では・・・
- 手で叩いて粗ジワを伸ばす
- 干す前に振りさばいてシワを伸ばす
- 縫い目を引っ張って整形する
- 襟や前立てなど縮みやすい部分を伸ばす
これで素材によってはノーアイロンで着られるほどキレイに乾かすことができます。
手順4:乾燥機を使う
十分に手で叩いてあげても、まだ本来の膨らみを取り戻したとは言えない状態です。
手作業ではここが限界です。
本来のボリュームを復元するためにはドラム式の乾燥機を使うのがベストです。
乾かすためではなく、羽毛をほぐすために使います。
ドラム式乾燥機の回転の時にかかる適度な力と温風が羽毛をほぐしてくれます。
この状態のダウンが・・・、
このように膨らみます!
全体的なシワっぽさも消えて、胸が押し出されるほどボリュームが出ています。
さらに見てみましょう。
こちらが仕上げ乾燥前の厚みです。
仕上げ乾燥後は約2倍ほどの厚みになっています。
仕上げ乾燥は10分ほどで十分です。
コインランドリーを使用したとしても10分なら100円で済みますので是非お試しください。
ワンポイント:ダウンはふんわり、ふっくらしているからこそ暖かい!
ダウンは中の羽毛が空気を抱き込み、その空気が断熱材の役目を果たすから暖かいのです。
そのため、このようにボリュームがでなけれなダウン本来の保温性は損なわれてしまいます。
ダウンのお洗濯は洗うことではなく、乾燥後のボリュームアップが最も重要なのです。
失敗しないためのポイント
ダウンのお洗濯にはまだまだ心配事があります。
よくあるダウンの失敗例をご紹介しますので、該当するような場合にはご家庭でチャレンジするかよくご検討ください。
1.ブラック以外は要注意
今回はブラックのダウンでお洗濯しましたが、他の色の場合には注意が必要です。
ダウン衣類は羽毛の吹き出しを防ぐため、繊維の間に隙間ができないような加工が施されています。
(ダウンプルーフ加工といいます。)
表面の生地は通気性が少ないのです。
そのため、乾燥の時の水分がどこに逃げていくかというと、縫い目に集中します。
その結果、縫い目部分に影のようなシミができる”際つき”という現象が起きてしまうのです。
クリーニング店では乾燥機と自然乾燥の上手な使い分けによりこれを回避しますが、ご家庭では自然乾燥がメインとなるため乾燥速度が遅く、際つきが起きやすくなってしまいます。
ブラックやホワイトなら目立ちませんが、ベージュやその他の中間色では注意が必要です。
2.キルティングが細かい場合は要注意
ウルトラライトダウンなど、ボリュームが少なくコンパクトなダウンはキルティングが細かいですよね。
キルティングが細かいダウンはボリュームが復元しないという事態が起きやすくなります。
それは、ダウンポケットのスペースが狭いため、中の羽毛が動きにくく、仕上げ乾燥後にも絡まりが解消されにくいためです。
この絡まりを解消するためには技術を必要とするため、ご家庭でのお洗濯は避けたほうがよいかもしれません。
3.乾燥不十分は要注意
繰り返しになりますが、ダウンのトラブルで多いのは乾燥工程です。
ボリュームが復元されないのも、一番の原因は乾燥不十分によるものです。
羽毛が空気を抱き込み、その空気が断熱材の役割を果たすからこそダウン衣類は暖かいのです。
先ほどの”洗濯と乾燥”の項目、手順3~4をもう一度ご確認いただき、しっかりとボリュームを復元させてください。
4.洗濯後に嫌な臭いがする
ダウンを洗濯すると、獣臭いような異臭を発する場合があります。
これはダウン衣類の生産過程で問題があるときに起こりやすいのです。
ダウン衣類の羽毛は、事前に洗浄や脱臭処理されてから詰め物として使用されます。
しかし、その処理が十分でないと雑菌が繁殖して異臭を発生するのです。
- 洗浄時間を伸ばして洗剤をよく浸透させる
- 酸素系漂白剤を使用して除菌効果を得る
もしも洗濯後に異臭が発生するようでしたら、このようなひと手間を加えて再洗いしてみましょう。
5.色ムラが発生する
水分が残っていると表面が変色する危険性もあります。
モンクレールなどのブランドダウンにも使用されるナイロンという生地は、ある条件が整うと変色してしまいます。
酸化窒素ガスという物質が水分に吸着すると染料を分解して変色させてしまうのですが、ナイロンという繊維はその影響を受けやすいのです。
※酸化窒素ガスは、車や工場の排気ガス、湯沸かし器や石油ストーブの燃焼により発生する、とても身近にある物質です。
ご家庭では、どうしても自然乾燥がメインとなるため乾燥不十分になる可能性が高くなります。
しっかりと時間をかけて乾燥し、乾燥機が使える環境ならば必ず仕上げ乾燥を行うようしましょう。
まとめ
いかがでしょうか?
実は”洗う”こと自体はそう難しいことではありません。
問題は乾燥工程です。
ここを間違えなければ、失敗の可能性をグーンと抑えることができます。
ダウンはとても高価な衣類です。
失敗しないよう丁寧に、正しい方法でお洗濯してください!